ふと、「ものすごく大きな木が見たい」と思うことがある。
仕事でちょっと失敗した日とか、部屋の片付けが進まない日とか。自分の世界のちっぽけさに嫌気がさしたとき、人は大きなものを欲するのかもしれない。いや、ただの現実逃避かもしれないけれど。
そんなわけで、車を走らせて熊本市北区へと向かった。目指すは「寂心(じゃくしん)さんの樟(くす)」という、樹齢800年を超える大きなクスノキだ。
樹齢800年というピンとこなさ
熊本の街中から車を走らせること約30分。「寂心緑地」という公園に着いた。
駐車場から少し歩くと、すぐにそれと分かった。というか、分からないはずがない。
「……木というより、森じゃない?」
思わず小声でつぶやいてしまった。

1本の木のはずなのに、枝がわさ〜っと大きく広がっていて、まるで小さな小山か森がそこにポツンと置かれているみたいだった。青空とのコントラストが美しくて、しばらく口をぽかんと開けて見上げてしまった。
樹齢約800年という。800年前といえば鎌倉時代初期だ。源頼朝とかそのへんの時代から、この木はずっとここで生きてきたことになる。
800年の歴史に対して、私の今日の悩みなんて「昨日食べたプリンの賞味期限が切れていた」くらいのものだ。なんだか急に自分の悩みがどうでもよくなってくるから不思議だ。
寂心さんって、誰なのだ
ところで、「寂心さん」とは誰なのだろう。地元にいながら、実はよく知らなかったりする。
案内板を読んでみると、戦国時代の武将で「鹿子木親員(かのこぎ ちかかず)」という人らしい。出家して「寂心」と名乗ったそうだ。熊本城の前身となる「隈本城」を造った、歴史上のすごい人物なのだという。

木に包まれて眠る寂心さん。なんだかファンタジー映画のようでもあるけれど、「ちょっと木が育ちすぎちゃってすみません」と、当時の植えた人も焦ったのではないだろうか。
根元を近くで見ると、幹の周りは約13.3メートルもあるらしい。どっしりとした太い幹は力強くて、まるで大昔から大地に根を張る生き物のようだった。
木の陰でたたずむ午後
根元を守るためにぐるりと低い柵がしてあるので、私は柵の外側から静かに木を見上げた。

大きな枝が広げる日陰に入ると、すーっと涼しい風が吹き抜けた。葉っぱの隙間からこぼれる光がキラキラして、とてもきれいだ。
ベンチに座って、しばらくボーッとしてみた。すれ違う散歩中の地元の人と軽く会釈をかわす。身近な場所でも、こうしてひとり時間を過ごすと「ちょっとした旅気分」になれるのが良い。
木を見上げていると、「まあ焦らず行きなさいよ」と静かに言われているような、言われていないような気がしてくる。たぶん言われてはいないのだろうけれど、勝手にそう思うことにした。
心がちょっと軽くなったので、このあとは田原坂の方までドライブして、おいしいものでも食べて帰ることにしよう。
立ち寄りメモ
- 施設名: 寂心さんの樟(寂心緑地)
- 住所: 〒861-5531 熊本県熊本市北区北迫618
- 営業時間・定休日: 常時開放(入園無料)/年中無休
- アクセス: 九州自動車道「植木IC」より車で約15分、JR熊本駅より車で約30分
- 駐車場: あり(無料、普通車約20台)
※アクセスや駐車場などの情報は変更される場合があります。お出かけ前に最新情報をご確認ください。

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